コンゴNo.5 キワンジャ基地訪問

 今日はゴマから国連の軍用ヘリにのり約30分のところにあるキワンジャ基地を視察。ここで市民の保護活動の詳細を見る。ジャングルの中の基地には花がきれいに咲いていた。インドから種を取り寄せ、まいてみると何の手入れもなしにぐんぐん育ちきれいな花を咲かせるという。

 パトロールというのはわかりやすいだろう。PKO部隊が地域をパトロールしていること自体が武装勢力に対する抑止になるわけなので、昼も夜もパトロール隊を出して警戒する。特に重要なのは、市場がたつ日のパトロール。さきも述べたように、武装勢力は給料の支払いの滞りがちな正規軍も含めて市民から違法な「税金」やら「通行料」やらを取り立て生計を立てている。市場がたつ日は特に現金の動くわけであるから、彼らにとってはねらい目の日なのだ。PKO部隊にとっては忙しい日となる。

 次に、「存在そのものによる抑止と保護」。PKO部隊の基地の周辺は比較的安全であるので難民や避難民がまわりに避難してくることはダルフールなどでも見られる状況だが、キワンジャ基地のすぐ隣にも周辺地域から逃げてきた避難民のキャンプがある。ここが武装勢力によって攻撃されそうになったとき、PKOインド部隊は武装装甲車を避難民キャンプの外側に配置し、武装勢力からの攻撃を防ぐことで避難民たちを保護したという。

避難民キャンプの「プレジデント」からぜひ訪問してくださいとの招待をうけたので、訪問する。

 そして、キワンジャの司令官から詳しくブリーフを受けたマイマイ武装グループのマエレ「中佐」の逮捕オペレーション。日本でも少しは報道があったかもしれないが、2010年の夏、コンゴ東部のワリカレという地域でマイマイとFDLRなどの武装勢力が300人以上の計画的な大量レイプを行うという惨劇があった。マエレ「中佐」はその際に大量レイプを指揮した容疑がかかっている。この容疑者をPKO部隊が2010年10月5日に拘束した際の活動の詳細は、民と軍が一致して軍事の抑止力と文民の交渉力を活用して成功を収めた例として興味深かった。

 このオペレーション・デー・ブレークと名づけられたこのオペレーションにはインド軍と南アフリカ軍のマシンガン部隊および武装ヘリ、そして文民部門のスタッフが数人参加したという。マエレ「中佐」の居所をつかんだ文民職員が現場で「中佐」とその取り巻きにPKO部隊に降伏して身柄を預けるよう、交渉。同時にヘリ4機を投入して現場にPKO部隊が展開したのだが、取り巻き連はRPGを手にヘリを攻撃する姿勢をみせていたという。地上の文民職員がヘリ部隊からの連絡で、彼らがRPGを肩に乗せた瞬間に武装ヘリが攻撃する旨を通告し、結局一発も発砲せずにマエレ「中佐」の身柄は拘束され、コンゴ当局に引き渡されたのである。PKO部隊が必要とあれば武力を行使する意思を明確にしつつ、文民との連携によって効果的に活動を行った例である。ちなみに、投入された4機のヘリのうちの一機は南ア軍の女性戦闘パイロットによって操縦されていたという。しかも、天候があまり芳しくない状況でオペレーションを実施する最終決断は、彼女の「Let’s go!」の一声でなされたのだという。

 「武力」を行使する強固な意志を持ちそれを明らかにしつつ、なるべく行使しないで結果を得ようとするのが国連PKOの極意である。そしてその目的は、最も弱い女性や子供といった市民を守り平和をもたらすことである。「軍は悪」とのたまったどこかの国の政治家はなんとおっしゃるだろうか。