勲章を頂く

突然だがブラジル政府から勲章を頂いた。10月19日にブラジル国連代表部のDieguez将軍がRibeiro Viotti大使の使いとして私を訪ねてこられ、「ブラジルのルラ大統領は、あなたのブラジルへの貢献を評してこのたびMerito Aeronautico勲章を与えることを決定しました。」私の反応は正直、「は?あの、何かの間違いではないでしょうか?貴国に特に貢献したような覚えがないのですが・・・?」「間違いなんてとんでもありません。昨年来、ブラジルのPKO活動に関して、大変甚大な貢献を頂いております。3月にリオデジャネイロでおこなわれたPKOに関する国際会議の成功は、あなたなしではあり得ませんでした。」

リオでの会議は、確かにアジェンダ設定から参加者の推薦に至るまでずい分丁寧に協力したが、それはブラジルのPKO活動に占める地位を考えても私たち国連にとっても重要だったからだ。しかも、肝心の会議はハイチ大地震のためいったん決まった日程から延期になってしまい、実際に開催された時には別件の出張と重なってしまって私は参加すらしなかった。

実は国連には叙勲・ギフト・謝礼の受け取りなどに関して厳しい職員規則がある。ギフトは20ドル以上のものは基本的に受け取ってはいけないことになっている。以前、ある国の国連代表部から自宅に大きなルイヴィトンのハンドバッグが届けられたことがあるが、丁寧な書簡とともに送り返したことがある。叙勲も基本的に受けてはいけないことになっている。要するに国際公務員として、世界中のいかなる政府の影響も受けてはならないという国連憲章の原則を貫くためである。唯一の例外は、本人の知らないところですでに決定されており、断ることによって大変な失礼にあたったり、その国との関係が損なわれると考えられる場合である。その場合は、国連を代表して受け取り、すぐにいったん国連事務局に預け入れ、定年や辞職で国連を離れる時に受け取るということになっている。今回のブラジルからの申し出は、私の知らぬ間の大統領決裁でこの例外に当たると認定され勲章を頂いてもよいことになった。

今日は国連デーのお祝いでもあり(本当は10月24日だが今年は日曜にあたるので)、第4委員会でのPKOに関する討議の開会日でもあり、またこの勲章を頂くセレモニーもあったので和服で出勤する。午前中の第4委員会開会式ではPKO局幹部職員は事務次長ともに壇上に上がる。軍事顧問と警察顧問はそれぞれの制服で、私は和服で。壇上の私の携帯に、普段から親しくしているカナダやインドネシアの代表が「日本のキモノは素敵ですね」とテキストメッセージ送って下さる。午後はまず、新任の外交官向けの訓練セミナーでのスピーチをオーストリア大使とともに。

そして4時から、ブラジル国連代表部での勲章授与式に伺う。家族もどうぞ、ということだったので、夫と学校の放課後、上の娘が駆けつける。セレモニーはほとんどがポルトガル語だったので、何がなんだか良くわからなかったが、ともかく勲章を頂きその後レセプション。生まれてはじめての経験なので、素直にうれしい。勲章は週末は自宅に持ち帰り、月曜に国連事務局の所定の場所(金庫があるそうだ)預け入れることになる。