参院選結果を見て思う

今日は1日、TVジャパンで参院選結果のニュースを見ていた。(ちなみに、私もNYの総領事館で投票しました。思ったよりたくさんの人たちが、投票に来ていた。)民主党惨敗。菅首相が消費税増税に言及したのが敗退の主な原因だという。もちろん、政権交代後の鳩山政権下での迷走が背景にはあるのだと思うが。

民主党の政策に賛成できない部分も多かったが、私は民主党参院単独過半数を得て、安定した政権運営を可能にすることが必要だと思っていた。日本は2006年の小泉首相辞職以来、4年間で5人の首相が交代するというまさに異常事態。現在のような世界的な経済危機のなか、日本の財政再建と経済の建て直しのためには、安定した政府とリーダーシップのもと、腰をすえて改革に取り組む必要があったはずだ。社民党国民新党といった、民意を反映しているとは言い難い弱小政党に遠慮することなく、数年間は、民主党にやらせてみるべきだったと思うのだ。日本は今、政治の不安定が経済の悪化につながる悪夢のスパイラルに陥っている。

菅さんはまだ首相としては未知数だと思っていたが、私は消費税増税の必要性に言及したことは評価していた。常識的に見て、日本の財政はもはや「事業仕分け」といった小手先の歳出カットで再建できる状態にないことは明らかである。無駄を除くことは当然必要だが、増税によって根本的に財政を立て直さなければ、大変なことになりかねない。そうなって一番困るのは、国民のはずなのに。

ちなみに私は、この「事業仕分け」というのにかなりの懐疑心を持っている。これはメディア受けを狙ったショーではないのか。そもそも、国会がきちんと機能していれば、国の予算配分の大きな枠組みをきちんと審議し、どこに優先的に配分していくのか、現在の財政状況下でどこを削っていくのかを決められるはずなのだ。そしてそのブループリントにしたがって、官僚が細かい配分をする。そして、無駄を許さない会計監査と透明性を保障する制度を完備すればよいのだ。今の日本では、本当の意味での政治主導が機能していない。また、透明性確保のためのシステムもないし、メディアも含めて、権力を監視するという勢力も機能していない。イギリスのエコノミスト誌に、日本の官邸機密費についての記事が載っていたが、その切り口は、権力と一体化してしまっている既存のメディアは、官邸機密費についての真剣な報道もしない、というものであった。こうして、TVカメラの前で細かい歳出のヒアリングを行うという「事業仕分け」が、あたかももっとも主要な政策実施のツールのように祭り上げられる。

蓮舫さんは、スーパーコンピューター開発事業をめぐる事業仕分けでの「世界No.2ではだめなのか」発言で一躍有名になった人だが、まさにこういう事項こそ、国会での国の将来のあり方についての議論の中で討議されるべき問題であって、そのプロジェクトにかかわる官僚を相手に「事業仕分け」でなすべき議論ではないだろう。科学技術開発政策は、日本のような国にとっては、根幹にあるべき事柄なのだ。No.2ではだめに決まってるじゃないか。

話はそれますが、私は東京選挙区だったので、熟慮の結果この蓮舫さんに投票した。普通、私はタレント議員には投票しないのだが、まず、ほかに投票したい人がいなかった。そして、彼女のもつ若さとエネルギー(私より一回りくらい年下か?)は、今の内向き、自信喪失の日本においては、プラスになりうると判断した。日本の政治には、若者を鼓舞して大きなうねりを作れるようなパワーがかけている。社会変革は、いつの世でも有志の若者たちによってもたらされる。60過ぎたおじいさんたちには、無理なのだ。蓮舫さん、もう少し腰をすえて勉強して、がんばってほしい。当選後の談話で、「事業仕分けをがんばる」のようなことを言っていたが、もっと大きなことを考えてほしい。「事業仕分けて国滅ぼす」、にならぬように。

ねじれ国会になってしまった以上、民主・自民の両方が党利でなく国益を考えて協力していかなくてはならない。夫の国、スウェーデンは1990年代の初め、財政再建と年金制度改革に全党一致協力してあたり、成功を収めた国だ。今も財政赤字に苦しむEU諸国の中にあって、スウェーデンの財政は健全、しかも高負担・高福祉の制度にもかかわらず経済成長もしている。日本にもできないはずはない。政治家が「政治屋」ではなく「ステーツマン」であって、国民が政治屋とステーツマンを見分けることができさえすれば。