自分の立ち位置を明らかにすると言うこと − わたしの超硬派・超辛口ブログ

 なぜ今ブログをはじめる気になったのか、はっきりとはわからない。たぶん、私が自分の人生における「次の段階」に入りつつあるのだと思う。

 これまでも、応援してくださる若い方々から「ナカミツさんは、ブログしないのですか?」などと言われたことはあるのだが、仕事と育児でまず時間がないし、ITは苦手でもあるので、ブログ開設など考えたこともなかった。Facebookでさえ、ハイチ大地震がなかったらはじめることはなかっただろう。ハイチでは、国連PKO要員が数多く犠牲になったので、混乱した状況下でスタッフ同士が効果的に情報を交換できるように、PKO局はFacebookTwitterのページを開設したのだ。初めてFacebookに登録する私のことを、職場の若いスタッフたちは、「Facebookなしで、どうやって世界中に散らばる友人と連絡とってたんですか?!」と驚いていた。ちなみに、Twitterの方はやっていない。

 私はこれまで国際社会でキャリアを積んでくる過程で、幾人かの偉大な先輩たちから心に響く言葉やアドバイスを頂いてきた。人生の節目で方向性を考える時、彼らの言葉がどれほど参考になったことか。そんな言葉のひとつに、もう10年以上前、スウェーデンの元外務大臣ステン・アンダーソン氏(パルメ首相の片腕として中東和平に尽力した。2006年没。)にもらった言葉がある。

 「君のプロの職業人としての本当の価値は、自分の信念とたち位置を明らかにするかどうか、できるかどうか、にかかっている。」

 私が親しくさせていただいている「偉大な先輩」の一人、ノルウェーのストルテンベルグ元外相の70歳の誕生祝いの小さな集まりでのことだった。その会に参加していたただ一人の若輩者の私に、アンダーソン氏、ストルテンベルグ氏、そしてフィンランドのアティサーリ元大統領は、(国連という)大きな組織の歯車のひとつとして終わるのか、またはそれ以上の者になるのか、それはひとえに、私が確固たる信念と色々な課題に関する自分の立場をしっかりともてるのか、そしてそれらを明らかにする勇気を持てるのかにかかっている、とそれぞれ強調した。そして、「その時がくれば、自然にわかるようになるだろう」と。

 以前緒方貞子さんにも言われたことがある。「日本で立身出世するつもりのないあなただから、日本に向けて色々と発言するのは、あなたの責任でもあるとおもいますよ。」

 去年あたりから、これらの言葉が頭の中で時々聞こえるようになった。たぶん、ここ2年くらいで自信がついてきたのがひとつ。国連事務局の上級部長のポストを取るのは「難しいですよ」と散々外務省の人たちに言われていたのだが、政府の支援なしで、独力で得ることができたし、着任してからの仕事ぶりは国連内外で高く評価してもらっていると思う。そして、私は歯車のひとつから、歯車を動かす側になりたいと望むようになった。

 ここまで来て、はっきりとわかるようになったのは、これは他人との競争ではけっしてないということ。自分との対峙である。アンダーソン氏の言葉の意味が、今ははっきりとわかる。

 ブログを書く作業を、自分と向き合うプロセスに役立てたい。自分の考えるところを文章にする作業、そしてそれを公表することによって、自分を鍛錬していこう。だから、これは超硬派のブログだ。