帰国休暇まで

日本に向かう飛行機の中でこれを書いている。日本出張から戻ったと思ったら、2週間足らずでまた日本へ。実は国連では2年に一度、家族ともども母国に休暇で帰してくれる。ちょうど今年がその帰国休暇の年にあたっており今回の予定もずいぶん前から決まっていたことなのだが、それにしても忙しいことだと自分でも思う。先延ばしにするとその分ずれていってしまうので、損をしたくなければ基本的に消化せねばならない休暇なのだ。

出張から帰った後の2週間は、本当に目が回るほど忙しかった。国連ではクリスマス休暇に入る前に様々な案件を片付けるためにいろいろな会合がもたれる。私にもNYでのいくつもの会議・セミナーでのスピーチや議長役が立て続けに入り、その合間に2月から始まる国連総会のPKO特別委員会の準備のために主だった加盟国の代表部をまわって会合を持つ。毎年春に行われるこの特別委員会はPKOの政策議論の場であり、2010年まではPKO局長室が直接管轄していたのだが、来年2月の会期より私の部局の責任となった。国連での議論はなんであれ「政治的」になるので、会議を成功に導くには加盟国間の地ならしが重要だ。それで、なるべく丁寧に多くの加盟国の代表部を訪ねて関心事項や方向性を聞きだすことから準備は始まる。

ワシントンDCへの一泊での出張も急遽入った。外交問題評議会というシンクタンクが国連PKOに関する非公式の小さなラウンドテーブルを開催することになり、冒頭スピーチを頼まれたのだ。見たところこのラウンドテーブルはおそらく国務省からの働き掛けでセットされたものだったようだ。背景にあるのは11月の議会中間選挙での共和党の勝利。これまでと違いより慎重な議会対策が必要となるのは明らかで、その準備のために行われた会合だ。こういうところ、アメリカにおけるシンクタンクの役割は本当に面白い。参加者は約20名、国務省国防総省ホワイトハウスのかなりのレベルの人たちに加えて、PKOを見ている様々なシンクタンクの専門家、そして議会の外交および国防委員会のスタッフなど。いずれも、大変レベルの高い質問をバンバンしてきて、知見の高さが明らかであった。彼らの関心事項は大きく分けて2つである。一つは、PKO改革がいかに進んでいるのか、その改革がコンゴスーダンでのPKO活動においていかなる成果を上げているのか、という点。つまりPKOの効果的な運用をアメリカとしていかに進めていいけるのか、ということだ。要するに、自分たちの直接派兵はイラクアフガニスタンで手一杯だが、その他の紛争地では国連に効果的に活動させ、国際の平和と安全を守らせるのがアメリカとしての国益である、ということだ。そして2つ目は、アフガニスタンが片付くまではアメリカの国連PKOへの部隊派遣はあり得ないが、当面どのような支援・サポートが考えられるのか、何が効果的であるのかという点だ。こういう会合は、参加していて実に有意義だと感じる。日本での会合のように基本的な事柄を繰り返す入り口議論や「日本がいくら出さねばならぬのか」といった表層的な議論ではなく、自らが直接派兵していなくともサブスタンスを深く議論する。グローバル国家とそうでない国との違いは、こういうところに明らかに現れる。

休暇に入る前の数日は、数多くのクリスマス・カードを書く。ワシントン往復のアムトラックの中でも、また家にも持ち帰り・・・

ほとんどくたくたになって、それでも終わらなかったいくつかの仕事を持って日本行きの飛行機に乗り込んだ。ちなみに、今回はJAL。我が家は家族で旅行をするときはいつも当然エコノミークラスなのだが、さすがに日本の航空会社、エコノミーでもサービスは上々。フライトアテンダントも大変丁寧で感じがよかった。日本では少し骨休めができると良いなと思いつつこのブログを書く。